【福島復興WS】福島の復興と放射線についての授業2024
2024年7月30日 09時00分7/25,26に福島の復興と放射線についての授業を実施しました。
今年はあさか開成高校様の参加がありました。
◎参加者
本校希望生徒50名、あさか開成高校6名
担当:本校物理教員
◎目的
放射線とは何か知り、福島県の現状について把握すること。そして放射線の知識を土台として、現在の福島県の課題(廃炉、除染と除染土の処理、風評被害・偏見)を科学的・社会学的に分析し、自分の意見を持てるようになること。
◎授業内容
<第1章>放射線の基礎 : 放射線の正体、単位と測定法、原発の原理
<第2章>放射線の実験 : はかるくんをもちいた実験(環境放射線量の測定、距離と遮へいによる減衰の確認など)
<第3章>福島の現状 : 放射線の生体への影響、現在の福島の線量や食品検査の結果、甲状腺検査の結果と課題、放射線以外の健康影響
<第4章>福島の課題 : 現在の原発の様子と課題、現在の福島県の人口などの状態、風評被害とその原因、新型コロナウイルス感染症、能登半島沖地震後の混乱との類似性
<第5章>福島の努力 : 避難指示解除地域の現在、福島の人の震災後の努力、復興のポジティブな側面
終盤での議論:「東日本大震災の教訓は何か」
◎生徒の感想
・放射線は宇宙や人間からも出ているというのは他の講義で知っていたが、実際に何μ㏜くらいか、どのくらいで人体に害が出るのか、よくわかっていなかったため、はかるくんでの実験はとても興味深かったです。事故が起こった当時の様子の話はとてもショッキングでした。自分が子どもを産めるのか知りたい、早く息子が大丈夫なのか測ってほしい、と言った言葉からは当時の切迫した状況が伝わってきました。放射線の被害は身体的なものだけではなく精神的な不安を誘い、人々の心にダメージを与えていたんだなと分かりました。そのような不安を解消するのは正しい知識と、マスコミを含む知識を広められる人間というのが必要だというように感じました。大勢の人の助けによって復興が進み、福島は現在こうして他の県からも応援されるような県になったと思いますが、今が多くの人の辛い思いや苦労の上に成り立っていることを忘れてはならないと思います。それを理解できただけでも、この授業に参加した意義があったなと考えています。福島県民だからこそ、この経験・教訓をもとに、寄り添うことができる機会が、これからもたくさんあるはずです。そのような未来のために、過去と向き合い、伝えられる側から伝える側の人間になれるように頑張ります。ありがとうございました。 (2年男子)
・風評被害について。よくテレビでは某国が福島県産をすごく批判しているニュースを見るため、勝手に世界全体が懸念していると思っていた。でも意外とそうでもなく、良くも悪くも原発事故を知らない人もいると知った。無知で安易に批判したり危険をあおるのはひどいしやめてほしいけど、本当に何も知らないというのも悲しいというか少し複雑な気持ちになった。マスコミの危険を煽る報道があったとすると、それを見る私たち視聴者は、ニュースを見てそのまま受け入れるばかりで疑うこともなくとらえてしまうことが多い。そして、悪意のないものでも間違った情報や勘違いをさせてしまう情報は世の中にたくさんある。情報リテラシーという言葉で、いくつもの情報を見比べ正しい情報を判断する、というものがあるが、結局私にとって判断するのは難しいという考えに行きついてしまいがちである。講義の最後に教えてもらった、情報の判断についての意見も考慮しながら、自分に合った正しい情報の探し方を探していきたいと思った。今まで正しい情報を伝えることが重要だとばかり考えていたが、正しく伝えることで誹謗中傷を受けた人がいることを知った。それでも負けずに伝え続けてくれた人は本当にすごいと思うし、感謝の気持ちでいっぱいだ。 (3年女子)
・放射線教育は必要だと思う。正しい知識を持つことは何事であっても大切であって、また福島の原発事故は福島県民でも直接被害のあった人ではないと現状などがわからないということがあり、といっても福島県民だからという理由ではなく、日本国民として知っていて意味のあることだと思うからだ。しかし、興味のある人ならいいけど、興味のない高校生に教えても聞き耳を持ってくれるのかと疑問に思うところがある。そこで、授業で言っていたように、これからの未来を背負っていく原発事故を知らない子どもたちにこれから当たり前のように教えて常識にさせていくことは確かに大切だなと思った。 (3年女子)
・中間貯蔵施設について、同じ県内の市としてできることはないのか、正しい知識とともに考えたいです。そして、コロナや水俣病といった一見異なる話題にも目を向けられる人になろうと思いました。私は海外に行きたいという思いがあります。今回の授業を受け、世界から見た日本、世界の日本に対する判断は、日本にいる抱ければわかりにくい部分もあると時間しました。認識には嫌でも差が出てしまうし、その差を埋めなくてはいけないと思いました。辞書で「復興」を調べると「一度衰えたり壊れたりしたものをもう一度盛んにすること」とありました。実際に自分の目で被災地を見て、現地の人、東電で働いていた人などの話を聞いて、自分なりの「復興」に対する考えを持てるようにしたいです。 (1年女子)
・2章では1章の内容を発展させつつ実験や問題を通して放射線について理解を深めました。今まで鉛は放射線をよく防ぐということは分かっていたのですが、なぜかという理由を知りませんでした。密度の大きさであるという理由を知れてよかったです。日本人は放射線に対して恐ろしさの感情を強く持っているのに、医療被曝は世界トップなのが日本人らしくて興味深かったです。(略)授業はどのシーンを切り取っても考えることがあるくらい濃かったです。福島県で起きたあの事故から今回たくさんのことを学びましたが、このことだけの特殊な例ではなく、他の事象にも当てはまる教訓が多かったと思います。大事なのはただ学ぶだけでなく、他人や外国、他の出来事に活かすことだと思いました。 (1年男子)
・今回の授業を受けて、今まで自分がどれだけ福島のこと、放射線について知らなかったのかと痛感しました。家に帰ってから母と講義の内容について話しました。当時は、福島県でのみ放射線量がいくつ・・・と報道されていて、放射線についてよく知っている人なら安全だと分かる値であっても、他県の人には不安をあおるようになっていたと聞き、なんだかばかばかしくなりました。私も昨日までは全く放射線と福島について知らない側の人間だったのですが、授業を受けて考えが変わりました。正しい知識を身に付けることが私は一番福島に対するイメージを変えるため必要なことだと思います。 (2年女子)
・授業を受けるまでは自分はニュースをよく見ているし震災については他の人よりも知っている方だと思っていました。ですがその認識が間違っていることに気が付きました。具体的に言えば非科学的なほど徹底的に行った全袋検査、農家の方々の苦労、それでもやらなければならない理由など、表面的なことだけではない裏にある深刻な問題を知ることができていませんでした。処理水のタンクの話も衝撃的でした。1億円かかるタンクを1000期以上建設し、それを管理していく苦労、作業中の殉職者の方など、ここに書ききれないほどの多くのことを学べました。今後ニュースを見るときには、伝えられていることの裏にあることまで、「なぜ」という視点で見るようにし、鵜呑みにしないようにしたいと思います。水俣市について、水俣病の印象が強すぎましたが、今回の授業を受け、「福島病」と名付けられることが万一あったらとても嫌な感じがすると思いましたし、水俣市の魅力について何も知らないなと思いました。自分が福島の本当のことを知ってほしいと思うなら、まずは自分が同じように苦労した地域(水俣市に限らず)の本当のこと(ポジティブな面でもネガティブな面でも)を知らなければならないと思います。 (1年男子)